- 今まで仕事をしてきて、特に印象深い仕事は何ですか?
- 30年やってると、大事な忘れられない作品、ありますよね。幅広い年齢層に知っていただけているであろう『SLAM DUNK』『テニスの王子様』を始め、数々の作品に出演して来ました。それなりの期間お仕事を続けて来られたからということもありますが、皆さんの記憶に残っていく作品に携わらせていただける機会はそうそうないと思うので、すごく光栄なことです。沢山の人に観てもらうことが全てではないけれど、「観てました」と言ってもらえるのはそういう作品のおかげですよね。その時々、一瞬一瞬、大事にしてきたものがあって、出会いを重ねて仕事や人との関わり方がちょっとずつ変化してきて、今の自分があるような気がします。
- どんな変化があったのでしょうか?
- 自分自身が、役をしっかり作りこまないと演じることができないタイプだったので、いかに普段の自分と近いところで役を演じるかというのが当時の課題でした。かっこいい役の時はめっちゃくちゃ気取って演ってましたよ(笑)。基本的には役との共通点は少ないんです、僕自身はそんなにまぶしい学生時代を送ってないので(笑)。でも何とかその役に寄せて、自分にないところを補おうと。一番足りなかったのは、確実にコミュニケーション能力!本当に苦手で、人間性で仕事を獲るという意味が分かっていなかった。売れるには仕事しかないと思い、「自分はこう演じたい」「演じるところをしっかり見せたい」と必死でした。でも実際には、人間的なつながりって、すごく大事です。むしろそれこそが世界中全ての物を作っている。作品を作るのは人ですからね。今は、オーダーに応えてクオリティの高いものを提供することが信頼関係にもつながる、という考え方に変わったということです。
僕、実は『SLAM DUNK』のオーディションを受けていないんです。その少し前にレギュラーをやらせてもらっていた『ママレード・ボーイ』という作品がありまして、その収録を観に来ていた『SLAM DUNK』のプロデューサーさんが僕を認めてくれて、役に推薦してくれたんですって。僕はそれを知らなくて、その方が亡くなってから人伝てに教えてもらいました。嬉しいけど、悔しいなぁ。お礼も言えぬままに時間だけが過ぎていたなんて。人のつながりによって、そういうこともあり得るということです。